■移植登録の確認事項
登録に際して、「臓器移植コーディネーター」さんからの確認事項は、主に次のような内容でした。
・ 移植後は、一生薬(免疫抑制剤)を飲み続ける
・ 待機中は、常に連絡がとれる態勢にしておく
・ 臓器提供者(ドナー)の詳細は教えられない
・ 臓器移送の負担金が多額になることがある
・ 付添いの親族が必要
■移植の費用
医療費に関しては、一般的な手術と同じ保険適用になりますので、移植を理由に高額になることはありません。
私の場合は、脳死肺移植でしたので、医療費とは別に「日本臓器移植ネットワーク」への支払いがありました。また、術後しばらくは、病院の近くに通院のための部屋を借りていましたので、その費用がかかりました。
主な費用は以下のとおりです。
①入院・手術費用
基本的に、移植にかかる医療費は、健康保険が適用されて自己負担の割合は3割です。負担金額には上限額があり、所得に応じて月額約3万5千円~35万円程度が、医療機関に支払う額となります。
しかし、実際には、既に「難病医療費助成」か「重度障害者医療費助成」の受給者であることが多いので、最終的な自己負担額は、高額所得者でも数万円以内に収まる場合がほとんどだと思います。
なお、任意で個室を利用した際の差額ベット代(数千~数万円/日)やレンタルパジャマ代(100~300円/日)などは、健康保険の適用にならず、全額自己負担ですので、上記の金額には含んでいません。
②入院中の食事代
昔は、食事代も医療費に含まれていたのですが、今は原則自己負担です。
まず、標準的な所得者の自己負担額は、1食460円です。単純計算すると、1ヶ月の入院では、460円×3食×30日=41,400円になります。もし、難病医療受給者であれば、1食460円→260円に減額されますので、同23,400円になります。
低所得者の場合は、1食210円または100円ですので、同18,900円または同9000円です。もし、低所得かつ、重度障害者医療費助成を受けていれば人は、自己負担した分が還付されますので、実質的な自己負担はありません。
ただし、入院時に医療機関へ「限度額適用・標準負担額減額認定証」の提示をしなければならないという条件付きです。(※実際には、急な入院で間に合わないときは、当月内に提示すれば適用されると思いますが、できれば直前の受診時にでも提示しておくと良いと思います。)
③移植コーディネート費用
移植後、「日本臓器移植ネットワーク」に100,000円を支払うことになります。生活保護世帯または住民税非課税世帯の場合は、申請すれば免除が受けられます。
なお、移植希望登録時の登録料30,000円と毎年の更新費用5,000円は、免除されません。
④臓器運搬費など
臓器摘出医師の派遣費用と臓器の運搬費用が実費負担になります。特別な事情により、ヘリコプターを使ったりしなければならない場合などは、自己負担が百万円単位になることもあるそうですが、通常は、数万円~十数万円程度とのことでした。私の場合は、19万円余りでした。
しかし、これらの費用は、加入している健康保険によっては、一旦全額を立替えたあと、申請すれば費用が還ってきます。名目は「療養費」です。
窓口の担当者が慣れていない場合もありますので、事前に確認しておいたほうが良いと思います。
・臓器移植に係る療養費及び移送費の取扱いに係るQ&Aの送付について(厚生労働省)
⑤その他の費用
付添いが病院の近くに済んでいる人は別ですが、私のような遠方の患者家族には、手術から退院までの約3ヶ月間の滞在費用や交通費がかかります。私の調べた限りでは、公的な補助などはありませんでした。
病院によっては、民間の支援団体などの紹介を受けられるかも知れませんので、事前に移植コーディネーターさんや地域連携室で確認をしてみてください。
■移植までの過ごし方
移植を受けるまでに亡くなる方が少なくないことは聞いていましたので、感染防止と体力維持に努める日々でした。
・基本的な生活
「人混みを避ける」「手洗い・うがい・マスクの励行」「冷え・乾燥の予防」を心がけました。身の回りを整理し、人に頼めることは頼み、空気清浄機、加湿器、消毒液、機能性衣類などは必須アイテムになりました。
・仕事
術後に復帰することを前提に休職し、自宅療養しました。休みに入ると、急にガクンと体力が落ちた気がしました。働いているときは気が張っていてわからなかったのですが、身体にはかなり無理がかかっていたと思います。その後は、リハビリを仕事と思って過ごしました。
・住環境
私の病気は、原因が住環境にある可能性があったので、家を別の土地に建てて引っ越すことにしました。思い切った賭けでしたが、結果的に病気の進行は止まらなくても、ここまでやれば諦めもつくので、失敗ではなかったと思うことにしました。
・生活リズムの維持
体力を維持するために、運動とストレッチはほぼ毎日続けました。運動は、筋力トレーニング、愛犬との散歩、家事手伝い(掃除、食器洗いなど)でした。ストレッチは、今も起床時と入浴後にしています。
内容や回数は、病気の進行によって落ちていきましたが、毎日何かをすることで、生活にリズムができて、精神面でも効果があったと思います。
・体調管理
自宅に体温計、体重計、血圧計、パルスオキシメーター(脈拍と血中酸素濃度の計測器)を常備していました。パルスオキシメーターは、価格は数千円から数万円のものまであります。私は1万5千円くらいのものをAmazonで買いましたが、機能十分でした。
・持病の治療
体力があるうちに、持病はできる限り治しておいたほうが良いです。体力が落ちてくると、気軽に病院には行けません。特に、冬場は病院でインフルエンザに感染する心配もあり、あまり行きたいとは思わないはずです。
持病がない人も、悪い菌が肺に入って感染症になるのを防ぐために、歯科で口の中のチェックとクリーニングくらいはしておくべきです。私は、虫歯を治して、親知らずは全部抜いておきました。手術前後しばらくは、歯を磨くのもしんどい状態でしたので、済ませておいて良かったです。
後述しますが、心残りは痔の治療をしていなかったせいで、あとで大変な事態になったことです。。。
・食事
病状が進むと、食べる行為そのものがしんどくなってきます。元気な時は気付かなかったのですが、噛んだり、飲み込んだりしている間は、息を止めるような状態になるからです。また、ちょっとしたことで咳き込んでしまうので、作る側のストレスも大きかったと思います。
大好きだった麺類は、短く切らないと苦しくて食べられなくなりました。お米も喉を通りにくくなると、「玄米スープ」を作ってもらってよく飲んでいました。
食べる量が減ると体重も減ってきますので、ヨーグルトやお菓子、果物などでカロリーを補いました。『ウィダーインゼリー』などの市販のスポーツゼリーは手軽に栄養補給ができますが、吸うのは難しく、押し出してから噛むようにして飲んでいました。
メニューや栄養の偏りが気になる場合は、病院で栄養指導が受けられるようであれば、相談するのも良いと思います。