発病→移植決断

  • 病気の前ぶれ
  • 確定診断までの流れ
  • 病気の原因
  • 移植手術について
  • 移植の決断
  • 術後の生存率

 ■病気の前ぶれ

 健康診断で何度か肺の影を指摘されていましたが、すぐに精密検査を受けませんでした。

 体調の変化を年齢や季節のせいにしたり、仕事を優先して自分の身体を大切にしなかったり…。本当に、後悔先に立たずです。

 思い返せば、以下の症状は病気の兆しでした。 もし、当てはまる方がいたら、早めに病院で検査を受けてください。

(1)温かいうどんなどをすするとむせる

(2)香水や強めの匂いで咳き込む

(3)風邪が治っても咳が続く
(4)以前より息切れや疲れが出る
(5)食後や寝不足でもないのに日中眠い
(6)以前よりたくさん汗が出る、急に汗がでる
(7)上向きに寝ると何となく苦しい

(8)深呼吸をすると途中で咳が出たり、違和感がある

 

■確定診断までの流れ

 健康診断の結果を持って、かかりつけ医を受診すると、地元の総合病院(内科)で精密検査を勧められました。結果は「サルコイドーシス」という難病の疑いでした。しかし、専門医がいないため、大学病院を紹介されました。

 大学病院では、口から内視鏡を通し、肺の組織片を採る検査をしましたが、確定診断には至りませんでした。次に、入院をして肺の臓器の一部を切り取る手術をしました。その結果、病気はサルコイドーシスではなく、「特発性間質性肺炎」と診断されました。

 

■病気の原因

 たくさん検査をしてもらいましたが、原因の特定は今もできていません。

 木造で築40年以上の家に住んでいたので、可能性としては、カビやホコリ、ペットなどが高いのですが、病気の原因は、世の中に無限にあるので調べきれないのが現状だそうです。

 私は昔からタバコは吸いませんし、常に化学物質にも気をつけていたつもりでしたので、なぜこんな目に…、というのが正直な気持ちです。

 

臓器移植について

 臓器移植には、亡くなった人の臓器を受ける「脳死臓器移植/心停止後移植」と、生きている人の臓器を受ける「生体移植」があります。

 私が受けたのは、片肺への脳死臓器移植です。片肺移植か両肺移植か、また、片肺移植の場合は左右どちらかを自分で決めることはできませんでした。

 また、誰でも移植を受けられる(臓器を提供できる)わけではなく、年齢や他に大きな病気がないかなど、いくつかの条件をクリアしていなければなりません。

  ・日本の移植事情(日本臓器移植ネットワーク)

 

 ・脳死臓器移植/心停止後移植

 一般的には、亡くなった人から臓器移植を受けるには、『日本臓器移植ネットワーク』に登録することになります。

 登録には、検査入院をし、必要性を判断する審査に通ることが必要です。登録後は、適合者が現れるまでの順番待ち(待機期間)になります。待機期間は、2年未満が半数以上とのことです。

 私の場合は、検査入院に10日、入院~登録完了まで2ヶ月弱、登録から手術までの待機期間は約2年半でした。

 

 ・生体移植

 移植するのは、生きている親族(通常2人)の肺の一部です。実質的に待機期間がなく手術が受けられます。提供者の肺機能は、術後も日常生活に支障はありませんが、全く影響がないわけではないとのことでした。

 

 ■移植の決断

 まだ病状が軽い頃は、治療で改善すると思っていました。

 しかし、本格的な治療を始めてから2年が経ち、薬の量が増えても、病気の進行が止まる気配がなかったので、真剣に移植を考えるようになりました。

 とは言っても、この時点では、仕事を休んで治療に専念すれば、病気が良くなるかも知れないと思っていたのも確かでした。結果的には、考えが甘かったのですが…。

 実態としては、念のため「日本臓器移植ネットワーク」の登録をしておいたら現実になってしまった、に近いです。

 

 私には、生体移植の選択肢もあり、悩みましたが、待機期間を耐えられる自信があったことと、提供者の肺機能が低下するのは避けたかったので、選択肢から外しました。これに関しては、自分の意思を尊重してもらいました。

 

  脳死臓器移植は、言い換えれば、善意の人が亡くなるのを待つことになるので、順番が近づいてからは特に、毎日複雑な思いでした。

 また、見知らぬ人の臓器が自分の体内に入ることに抵抗がなかったかと言えば、嘘になります。

 しかし、今は一緒に生きているようで励みになっています。

 

■術後の生存率

 移植に限らず、大きな病気になったときに、気になるのが生存率だと思います。手軽に情報が入るインターネット時代の弊害か、私も事前にかなり調べました。

 ところが、闘病中に見たときと今見るのとでは、同じデータでも感じ方が違います。将来への不安が判断力に影響を与えていたと思います。

 ・データでみる臓器移植(日本移植学会)

 

 数字に不安を感じながらも、闘病中から思うようにしていたのは、「医療技術が発展すれば、生存率が伸びる可能性がある」ことです。肺移植の場合、手術数が本格的に増えてからまだ10年程度なので、その可能性も大きいと思うようにしています。

 平均の数字だけを見れば、私の生存率は、術後毎年数%ずつ下がっているはずですが、体調は逆に良くなっています。個人差や環境の違いは、ある程度自分の努力次第で補うことができると思います。