(※社会保障の話は、病気になった本人が、会社勤めなのか、専業主婦や学生なのかなどによっても変わります。ここでは、家計を支える世帯主が病気になった場合についての説明を中心にします。)
■健康保険の任意継続(2023.3.13更新)
勤め先の健康保険に加入している人が退職すると、そのまま「任意継続」(最大2年間※)するか、新たに国民健康保険に加入するかのどちらかになります。※2022年1月改正により本人申し出で途中脱退が可能になりました。
どちらが良いのかは、一概には言えません。退職後も高い所得が見込まれたり、何人も扶養に入れていたり、給付内容が魅力的な場合を除いては、国民健康保険に加入することになると思います。
私の場合は、1年半の無給の休職期間を経ていたうえ、退職後すぐに再就職をするつもりもありませんでしたので、扶養に入れていた母も一緒に、国民健康保険に移りました。
「任意継続」する場合の保険料は、勤め先で分かるはずです。国民健康保険は、電話では個別の保険料は答えてくれないことが多いので、本人を証明する書類を持って市区町村の窓口に行くことになると思います。後述しますが、事情によって減免を受けられますので、悩む前によく話を聞いておいたほうが良いと思います。
他に会社勤めの配偶者などの家族がいる場合には、その家族の扶養に入れてもらうことも考えてください。ただし、扶養に入るには、年収などの制限があるはずですので、事前に勤め先で要件を確認してください。
・【法改正】健康保険・任意継続被保険者制度の改正(マネーの達人)
■年金や健康保険料の減額など
①年金
厚生年金(共済年金)には、健康保険のような「任意継続」はありません。退職後は国民年金加入者になります。
収入が減った場合などは、保険料の免除・猶予が受けられます。私の場合は、退職後に障害年金2級を受給していたので、支払いが全額免除される「法定免除」手続きをしました。
もし、免除を受けることで将来の年金受給額が減ることが気になる方は、元気に稼げるようになってから追納すればよいと思います。
・国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度(国民年金機構)
②健康保険
国民健康保険料にも、保険料の軽減や免除制度がありますが、市区町村によって、対象範囲や申請条件に差があります。ちなみに、私の住んでいるところでは、資産証明や医療費の見込書まで必要とのことでしたので、申請する前にやる気が失せました…。
なお、(国民健康)保険料の算定は、世帯の前年度年収が基準になります。
傷病手当を受給し終わってすぐに退職したような場合や住民票上の同一世帯に収入の多い家族がいる場合は、 翌年度も保険料があまり下がらないかも知れません。
保険料が高額で、支払いが困難な場合は、裏技的にではありますが、市区町村役場で世帯分離の手続きをして、保険料の基準額を下げる方法もあります。上手くいくかまでは保証できませんが…。
・世帯主の定義とは?ケース別の世帯主と世帯分離について(マネージャーナル)
■医療費負担の支援
移植が必要な病気になれば、医療費の心配が真っ先に浮かぶと思います。しかし、公的助成制度が利用できれば自己負担額をかなり抑えることができます。代表的なものは、以下のとおりです。【 】内は担当窓口です。
①高額療養費制度【加入中の健康保険】
②負担限度額認定/負担限度額認定・標準負担額減額認定 【加入中の健康保険】
③難病医療費助成【都道府県の保健所】
④重度障害者医療費助成 【市区町村】
⑤医療費控除【税務署】※助成ではありません
①高額療養費制度
月々の医療費を上限額を超えて支払った場合、超過分があとから戻ってくる制度です。対象になる月は保険者から通知が来ると思います。上限額は、所得によります。
②限度額適用認定(標準負担額減額認定)(2023.9.11更新)
月々の医療費が①の上限額に達すると、それ以上窓口で支払う必要がなくなる制度です。①と異なり、申請が必要でしたが、2021年10月 マイナンバーカードによる受付ができる医療機関では申請不要になりました。
週単位以上の入院や在宅酸素療法を使う予定がある場合は、月々の医療費が高額になりますので、その前に申請をしておいたほうが良いです。 国民健康保険の方は市区町村へ、勤め先の健康保険に入って(扶養含む)いれば、その勤め先の担当の方に聞いてみてください。
なお、低所得者世帯の場合は、合わせて入院時の食費代が減額される「負担限度額認定・標準負担額減額認定 」になります。
③難病医療費助成
指定難病にかかる医療費負担について、①よりも低い上限が設定される制度です。申請窓口は、都道府県の「保健所」です。※市区町村の「保健センター」ではありません。
私は、指定難病の「特発性間質肺炎」でしたので、確定診断前よりも月々の医療費負担額が一気に下がりました。しかも、上限額以上は窓口で支払わなくて良いので、かなり助かりました。
適用になるかどうかは、病名次第ですので、まずは主治医に相談してください。
・指定難病患者への医療費助成制度のご案内(難病情報センター)
④重度障害者医療費助成
支払った医療費の自己負担分が還付される制度です。自治体によって要件が少し異なりますが、「身体障害」の等級が1~3級なら全額助成、4級なら半額助成が多いようです。
所得制限にさえかからなければ、保険適用される全ての医療費の自己負担が実質ゼロになります。
ただし、順序としては、お住まいの市区町村の障害福祉担当課で、「障害程度等級の認定申請(身体障害者手帳の取得)」をすることが先です。 助成対象者には、認定結果と合わせて説明があると思います。
なお、申請には、医師の意見書が必要です。申請のタイミングも含めて、事前に主治医と相談しておいたほうが良いです。自治体によっては、申請にかかる診断書料(1通 数千円かかります)の助成制度があります。
私は、在宅酸素なしでは生活が不自由になってから申請しました。障害の種類は、「呼吸器機能障害」です。他の器官にも障害がある場合には、合わせて申請をすることも可能です。
⑤医療費控除
所得税を納めている場合、確定申告(年末調整)をすると還付されることがあります。直接、月々の医療費の支払いが減るわけではありません。その他、障害者と税控除については、リンク先をご覧ください。
■障害年金
障害年金の申請は、「初診日」から1年半を経過していれば、基本的にはいつでも可能です。
この「初診日」とは、医師から病名の「確定診断」を受けた日ではなく、生活上の障害の原因となっている疾病やケガで「初めて医療機関を受診した日」のことです。
障害年金は、申請日でも決定日でもなく、この「初診日」に遡って支給開始になります。※初診日が10年前だったとしても、遡れる上限は5年です。
私は、「傷病手当」の受給中(休職中)に「障害年金」の申請をしました。「初診日」は、健康診断の後の地元病院を受診した日にしましたので、初回受給日には、初診日まで遡った約2年半分がまとめて支給されました。
この場合、傷病手当と障害年金の二重取りとはならず、重複した期間分を後日返納することになります。
障害年金の額は、国民年金の場合は、子がいなければ、2級が月額約6.5万円、1級が約8.1万円です。
厚生年金(共済年金)の場合は、月額報酬にもよりますが、子や配偶者がなければ3級が月額約5~6万円、2級が約10~12万円、1級が約12万円~15万円です。 正直なところ、障害年金だけでの生活は難しいです。
障害年金の申請は、必要書類や記入事項が多く、揃えるだけでも大変です。私は何とかほぼ自力でやれましたが、頼めるご家族がいないような場合は、社会保険労務士さんなどに頼むのも良いかも知れません。市区町村で、無料相談をしている場合もありますから、上手に利用してください。
障害年金の受給までの流れは、リンク先の動画を見たほうがわかりやすいと思います。(ちなみに動画の人は私ではありません)
■医療費助成、障害者手帳、障害年金申請の注意点
いろいろな助成を受けて初めて分かるのが、各制度の有り難さと分かりにくさです。以下の5つは、最低でも覚えておいてください。
①申請のタイミングには余裕をもって
申請から認定までは、「難病医療費助成」で2~3ヶ月、身体障害者手帳の「障害等級認定」は少なくとも1ヶ月以上、場合によっては3ヶ月以上かかります。その間は原則として、制度が適用されません。
また、「重度障害者医療費助成」は、「障害等級認定」の後すぐに手続きはできるのですが、実際に医療費が戻ってくるのは、医療機関に支払った日から2~3ヶ月程度先です。
②受給者証を忘れない
各医療費の助成制度は、それぞれ「受給者証」が発行されるはずです。受診の際は、月に一度、健康保険証と一緒に提出しなければ、適用されない場合があります。親切な病院は、事前に教えてくれるのですが…。
また、申請した市区町村以外の医療機関を受診するときは、その場では適用にならず、後日手続きが必要になることがあります。受給者証をもらったら事前に適用条件を確認をしておいてください。
③似て非なるもの
まず、「障害者」と「障害年金受給者」は、よく混同されます。中には、障害者になれば、自動的に「障害年金」を受給できると思い込んでいる人もいるようですが、両者は申請先なども含めて全く別の制度ですから、それぞれに申請・認定が必要です。
また、「重度障害者医療費助成」は、重度の「身体障害」だけではなく、「知的障害」や「精神障害」が対象なこともあり、各自治体によって呼び名が違います。いずれにしても、障害年金を受給しているかどうかは関係ありません。
④等級は変わる
身体障害者手帳の「障害認定等級」は、移植後はほとんどの場合が1種1級となり、基本的にはそのままです。
しかし、障害年金には更新があり、状態によって「障害等級」も変わります。
私は、移植手術から約2年後の障害年金の更新で、状態が回復したことを理由に、障害等級が2級から3級に降級になりました。この場合、身体障害者手帳の「障害認定等級」は変わりませんが、年金の「障害等級」が変わったので、年金支給額が減るということが起きます。
なお、支給額の変更は、結果が出てからではなく、更新日に遡って適用になりますので、その間に支給されていた分は返還しなければなりませんでした。
なお、医療費助成のうち、「難病医療費助成」は、術後の状態によっては負担上限額が変わる可能性があります。「重度障害者医療費助成」は、障害認定等級よりも世帯収入によって負担上限額が変わる可能性のほうが高いと思います。
⑤滞納、未納
公的支援制度は、保険料・税金の滞納や未納がないことが前提のものがほとんどです。
障害年金の受給資格など厳格なものもありますが、健康保険などは事情を話せば、分割払いなどに応じてもらえる可能性はあります。どうしても払えなくても、最初から諦めないようにしてください。
なお、障害認定(身体障害者手帳の取得)には、滞納の有無は関係ありません。